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愛の空想上の生き物 [コラム]

 授業中はひどく退屈な時間だった。おまけに女の子ベイベーもいないような灰色の男子校生活。先生が口角泡を飛ばして「聞いているのか?!」などといってるが、まったく聞いていないことなど言うまでもない。やる気のない僕らは窓の外ばかり眺めていた。さりとて学校の授業なんぞクソの役にも立たないというのは実際言いすぎで、実に愉快な様々なことを教えてくれる。三角関数が実社会で役に立たないなんて嘘だね。明日役立つ無駄知識くらいには役に立つから多分、僕ら、知識の剣は沢山もっていても、きっとうまい使い方を知らないだけなんだろう。そこまで教えちゃくれないからさ。たとえばまさか、サイン・コサイン・タンジェントという名曲がそこから生まれて三角関数ダシにして金が儲かるなんて思いもしない。大気圏に突入する時だって角度は重要だ。まして女の子ベイベーが「あたし酔っ払っちゃったみたい」なんつって僕にもたれる角度ならば、ティーチャーが言うところの最優先事項に決まっているだろう。そして僕は当時、自分が将来まさか分度器でヘソまで反り返った時の仰角を測ることになるとか想像だにしなかったわけだ。「角度が重要なのね」「角度が重要なんだ」

 三角関数でボロ儲けする方法の代わりに、うすた京介先生が書くようなスガスガシイ笑顔で僕は、窓の外を眺めながら空想の世界。白昼夢の中で胡蝶になっていた。まだ見ぬ女の子ベイベーとの浪漫あふるる「あはは」「うふふ」「こっちよー」「まてまてー」「きゃはーん」などという噴飯物の青春汁垂れ流し脳みそ膿んで耳から出てんじゃねえのかって夢の中にいた。それこそまさに夢の生き物である。後日やったことあるけどな。ああ砂浜にLOVEとか書いたさ。お約束は大好きなんだ。話がそれたがモトに戻そう。

 健全な男子校学生にとって女の子ベイベーという空想上の生き物は、大体現実とはかけ離れたものになっている。「がんばれカッちゃん甲子園」とか言ってくれるわけである。レオタード着てリボンこねくりまわしながらである。口のハシにタバコくわえて、夢は夢のままでよかったのかもしれないと後世思うことになるのだが、リアルみなみちゃんは「いや無理。あれは無理」と即答していた。「みゆきならどうだ?!」「え、中島?!」なにをかいわんやという話である。

 空想の中で、空想上の生き物が言った。「全部思い通りになる女の子なんてつまんないでしょう?」「いやゼンゼンまったくちっともかけらも」「無敵モードが楽しいのは最初だけよ・・・スターソルジャーだってそうだったじゃない」「・・・そうかもな」

 そして僕は、苦笑いを浮かべながらリアル女の子ベイベーのハートをノックする。
「やあベイベー、今夜こそは口説き倒してやるぜえ覚悟しろ」

 1面でゲームオーバーになったことは言うまでもない。

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あの頃本当に女の子って空想上の生き物だった
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