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愛の強制捜査 [コラム]

 センシティブな僕らはプライベートな時間を大切にしたい。だから便座はウォシュレットであるべきだ。そして便所の中で本を片手に優雅な時間を過ごしてる。表紙のタイトルは「ロック作詞講座」うーん、・・・マンダム。理由なき反抗のカタマリみたいなロックの魂を学術的に「これはね、こうでね」と解説を試みることがもう既にロックだ。僕はペラペラと中身をめくる。「あいにきてI・NEED・YOU!」ロックだ。僕はそんなメロディを遠い記憶の中で反芻し、ロックの作詞とはかくも奥ゆかしいものであったかと思っていた。ガチャリと便所の扉が開いた。「警察だ!」とか言わんばかりのイキオイだ。さっそく逢いにきたらしい。僕は両手を広げてウエルカムとでもいいたいところだが。「あ、入ってたの?」「僕のプライベートな恥ずかしいシーンをそんなに見たいのか?」「いらない」バタン。扉が閉まった。ちょっとドキドキしていた。洋式でよかったと本気で思う。和の心ってヤツぁ、そーゆー時には逆効果にしかならないからだ。

 プライベートな部分を見せてもいい相手ってのは当然限られる。相手がそんなに見たがるとも思えないが、見たいというのなら見せてやるのもやぶさかではない。むしろ見てほしいような気もする。この時のポイントはやはり、羞恥心というヤツだ。あっけらかんとハイドーゾではいかにも当然で、オモムキとゆーものが感じられない。そもそもそーゆー相手に対して、「自分だけの秘密、心を開いたあなただけに特別にご奉仕、お電話は今、すぐ!」という嬉しハズカシの場面である。ほんのり顔が赤くなるのも当然である。まして「いやん」とか「だめん」とか「ああっみないでっ!」なんていわれたらたまらない。どないやねん。どーなっとるのんやねん。ハアハア。無意味に高まるボルテージ。そして僕は、女の子ベイベーの秘密みたいに隠されたベールを、ドキドキしながら脱がしてみるのであった。外された文庫カバーの下は銀色夏生センセイのラブポエムであった。

 見つかったら困るものを、引き出しを全部出し切ってその中にしまい、また引き出しを戻すようにして隠してる。ちょっとやそっとじゃ見つからないぜ。でも、あんまりメジャーな隠し場所だから一撃でバレそうだ。みつけて欲しいのは多分、エロ本よりも僕のピュアーなハートの方で、気づいてほしいに決まってる。でも、「ははん、あんたあたしに惚れてるね」とか言われるとなんかムカつくので「そんなことないやい!」とかつい、言ってしまう。素直じゃないのさ。今にはじまったことでもないけれど、今はまだ隠しておきたいことだってあるんだよベイベー。

 そこに警察ですよ。ミニスカポリスの格好をした女の子ベイベーが「開けろ!令状が出ているんだ!」とか何とか言いながら、僕のピュアーなハートを家宅捜索することはよくある。探したって何も出てこないぜ。涼しい顔で眺めている。そして、机の引き出しを調べはじめた。女の子ベイベーはニヤリと不敵な笑みを浮かべると、一気に引き出しを抜き出しきったではないか。ちょっ!おまっ!そこはっ!

 そこには、書きかけのラブレターがあった。文面はたった三文字。「きみが」

 捜査はそこで暗礁に乗り上げた。事件は迷宮入りになった。

 「きみが」その次の二文字が、みかん汁で書いたあぶり出しになってることまでは気づかれなかったようだった。

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大事なことはいつも、多分みかん汁で書いてある
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