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愛の豪華朝食 [コラム]

 朝食は簡単なものと相場が決まっているらしい。それには深いワケがある。「きゃあ!おかーさんどーして起こしてくれなかったの!」と叫んだ女学生ベイベーが、「何度も起こしたじゃない」と、お母さんに言われつつ数分で朝食らしきものを平らげて、パンをくわえた状態で「いってきます!」と叫び、そこらのカドで不良っぽい転校生とドッシーンという擬音とともに激突しなくてはならないからだ、多分。そのためにも、朝食というものは簡単でなければならない。そんな簡素な朝食にも、玄人としてはこだわりとゆーものがあるわけで、「これが出てきたら豪華」なんて思うのはもちろん満漢全席を代表とする宮廷料理の数々なんだが、全席食ってたら流石のヒロインもそこらのカドでドッシーンとぶつかるどころか5時間目から満腹で登校という事態になりかねない。さりとてタフでハードボイルドな庶民派の豪華とゆーのは、銀シャリが夢のコシヒカリとかそんな勢いである。それでは絵的に豪華を主張するのが難しい。そして、うちのおかんはニヤリとタフでハードボイルドな笑みを口元に浮かべると、昨夜の残り物のスキヤキに火を通しはじめるのだった。

 豪華な朝食というのが実際にどんなものなのか知らないが、リゾートホテルなんかに泊まると、朝は大体バイキングである。だからといって朝も早よから北欧の海賊がビール片手に出来上がってるというワケではなくて、出来上がってるのはうちの酒飲みのオヤジである。見なかったことにして振り返れば、壁一面にはズラリと和風洋風中華まで各種様々な朝食のネタが取り揃っていた。僕は洋風のソレを選んでみる。焼きたてのクロワッサンにカリカリになったベーコンエッグ。湯気を立てているウインナー。サラダ。フルーツ。オレンジジュース。壁一面はデカイ窓。そして向こうはシーサイド。僕は今日一日をどんな風にエレガントに過ごそうかなんて考えていた。そして、うちのおかんはニヤリとタフでハードボイルドな笑みを口元に浮かべると、ふところからタッパーを取り出すのであった。

 ティファニーで朝食を食いたい。そんなオードリー・ヘップバーンみたいに、僕とオヤジは開店前のパチンコ屋。その前でポケットから、昨日買った冷めてるお好み焼きを取り出してモソモソと朝飯を食っていた。まったく絵にならない風景である。何しろ巨大なパチンコ屋の前は吹きっさらしで寒いんだ。ポケットから取り出すボスブラックの缶コーヒー。人生みたいに苦い味だ。「この金が今に何倍にもなるんじゃあ」それもまた、多分豪華な食事だったんだろうきっと。

 場末のバーのカウンター。女の子ベイベーの手前、格好つけて言ってみる。「キミと夜明けのモーニングコーヒーが飲みたいんだ」僕らはすっかり酔っ払っていた。すったもんだがあったんだ。何しろ夜通し飲んでからだ。そして朝食をとることになった。「・・・何が食いたい?」「ラーメン」「無茶ゆーな」

 そんな豪華な朝食のメニューは、一杯700円の迎え酒だった。

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キミと夜明けのモーニングラーメンが食いたい
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