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愛のうっかり [コラム]

 うっかり眠ってしまう。肉体に溜まった疲労。精神的に溜まった疲労。疲れてるんだよ。身体に力が入らなくて、弛緩する。なんだか暖かい。なんだか眠い。とても眠い。まぶたが重い。目を閉じると、今日あった色々なことが思い出される。考えなきゃいけないことは山積みで、考えたくないことの物置は一杯で、棚に上がってるものが落ちてきそうで、人生を振り返ることは危険だった。こっちよー。まるで三途の川の向こう側みたいに夢の世界が手招きしてる。僕は財布を確かめる。あの川を渡るためには、渡し賃として6文くらい、いるらしい。お釣りを貰うのも面倒なので、僕はクレジットカードは使えるのかどーか気になっていた。

 夢の世界ってのは随分と馬鹿げた代物だ。初夏の海辺に打ち寄せる波の向こうにはLOVEと書いてあって、波がさらっていった。水平線では戦艦富岳が大砲ぶっぱなしていて、見上げる空にはスーパーシルフ。メイヴ雪風がぶっ飛んでいった。そして女の子ベイベーはスクール水着だった。遠くでブルースギターの音が鳴っていた。まったく意味がわからない。僕はタフでハードボイルドなトレンチコートの襟を立てて、メンソールのタバコをくわえて、そこいら辺を歩いていた。フロイト先生にいわせると多分、性的欲求不満なんだろう。あのヒトはいつもそうだ。

 メランコリックなメロディ。夢の中に、疎遠になってしまった友達が出てくることはよくある。多分、きっと仲直りしたかったんだろう。夢の中に、優しく出来なかった女の子ベイベーが出てくることはよくある。多分、きっと優しくしたかったんだろう。夢の中で、しあわせなもう一つの未来を見ることはよくある。多分、僕はそれを選ばなかったからだろう。選びたかったのかもしれない。夢の中で僕は、それが夢だということに気づいていた。あの子はとっくに結婚して子供までる筈だ。

 どうせ夢なんだし、コスプレした女の子ベイベーにやりたい放題の酒池肉林とかとか景気のいいことでも考えればいいんだが、僕にはそれができなかった。

 スクール水着ベイベーに言った。
「ずっと、謝りたかったんだ。あの時は色々わかんなくてね」
「そう、でもいいよ」
 なんて、都合のいいことを言ってくれるベイベー。スクール水着。略してスク水である。
「もう一度やり直してみたいなんて、思うかい」
 ただ微笑む。スク水ベイベー。そして驚くべきことに眼鏡っ子だった。
「そうだな、僕はきっと、僕のままだからな」
 波の音が聞こえた。度入りの水中眼鏡の眼鏡っ子ってのはドーなんだろうなーとかいらんことを考えていた。
「そっちも幸せそうで、よかったよ。眼鏡にしたのかい。似合ってるぜ」
 女の子ベイベーは無意味に、水着のケツの部分のズレを直していた。
 うるんだ瞳で僕を見る女の子ベイベー(スク水&眼鏡っ子)

 そこに、憧れたものや、失ってしまったものが沢山あった。
 僕は息が苦しくなった。
 僕は息が苦しくなった。
 何故かわからなかった。
 ただ、胸が苦しくなった。

 そこで目が覚めた。

 風呂で溺れかかったのは多分、それっきりだ。
 きっと、まだまだやることがあるってことなんだろう。

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メイド服ってのもよかったかもしれない
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