やってみたい職業
世の中には色々な職業があって、僕らは大人になったら何がしかの職を手にするのが資本主義社会のルールということらしい。だから、みんなサラリーマンになったり板前になったりビューティーサロンを経営したりコンビニの店員になったり臓器ブローカーになったり無職になったりしてるということだ。そんな中で、一度はやってみたい職業は色々ある。
たとえば私立探偵。昔、チャンドラーやハメットにかぶれていた頃は、本気でパーマをあてて白いスーツを買いに行こうかと思っていたものだが、残念ながら僕にはタフなハードボイルドはできそうにない。何しろ、ミュージシャンなんてひ弱で不健康で大酒のみでナーバスと相場が決まっている。徹夜の張り込みなどは勘弁だ。逆に、健康的でいつもスガスガシイミュージシャンなんて、僕はNHKラジオ体操のヒトくらいしか知らない。いや、ミュージシャンなのかどうか知らんが、ボーカリストであることは間違いないだろう。まごうことなき歌って踊れるボーカリストだ。彼ならきっとタフでハードボイルドでダイハードな仕事もこなせるだろう。ナカトミビルが大変なことになっても、ラジオ体操のテーマで生き残れそうだ。
話に聞いたが男優というのも大変な仕事みたいだ。「よーいスタート」といわれたら、それまでぐんにょりくつろいでいても、即ぴょっこりスタンバってないといけないらしい。そいつぁ大変だ。というか尊敬に値する職人芸だ。
職業なのかどうなのか不明だが、世界征服した暁には地球の支配者である。やってみたいといえばやってみたい職業だ。玄関を一歩でたらゴルゴ13に狙撃されそうなワリに、仕事は今年90歳になる双子のおばあちゃんに紅白のモチをプレゼントとか地味な仕事なのかもしれない。
そういえば「座ってるだけでお金がもらえる」という噂のドモホルンリンクルの監視員は大分魅力的である。少年の頃、本気でアレになってもいいとか思った。多分昔から労働意欲がなかったんだろう。
一度くらいはやったみたい職業はある。吟遊詩人とゆーやつだ。中世ヨーロッパでは詩とか音楽は教会においてラテン語でやるものと相場が決まっていたらしい。それを、その土地の言葉で平たく歌ったのが吟遊詩人だ。英雄譚や愛の詩、騎士道なんかを楽器片手に朗々と歌う。彼らのやってることはどーも今の音楽とは違うらしい。強いていうなれば、ストリートでラップ調にギター抱えて「こないだ越後は新潟でー中越地震がありましたーべんべん」そこでの悲喜こもごもの情景を語るというカンジだ。一曲5分なんかじゃ終わらない。ドラマチックに美しくストーリーを語るのがメインのようだ。宮廷なんかでは高名な吟遊詩人を抱えたりするのもハヤったという。現代においてはいわゆるメジャーのアーティストさんなんかがソレにあたるのかもしれない。エリック・クラプトン先生やポール・マッカトニー先生あたりは当時なら宮廷お抱えってところなんだろう。いや、デッド・オア・アライブとかピストルズとかあの辺はどうかわからんが。現代において、果たして吟遊詩人の解釈がいかなるものか意見が分かれるところだと思うが、僕のたわけた毎日と恋物語を楽器片手に語ってメシが食えるなら、一度くらいはやってみたいものだ。
いつまでもいつまでも、僕はこんなラブソングをずっと歌ってっているさ。
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