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 雪が降っている。チラチラと雪が降っている。雪は降る前と溶け出す時が寒いという。ガタガタ震えながらギターのヴィヴラートを練習している。絶妙の揺れ具合なんだが、残念ながら冷えてないとできそうにない。練習がまったく無意味であることに気づくまで、しばらく時間がかかったものだ。ここ名古屋では滅多に雪は降らないが、それでもたまに落ちてくる。真っ白な雪が夜空から落ちてくる。そして、色々なことをもの思う。

 蛍の光、窓の雪。昔の人はそーゆー明かりでフミとか読んだらしい。確実に貧乏な生活だが、雪というのはフミが読めるくらいに明るいらしい。確かに白い雪は月や街の明かりを反射してくれそうだ。なかなかに情緒あふるる雪あかりの中で、ロマンチックな恋文なんぞ読んでみたいが、僕に届くのは請求書とか引き落とし明細とかそーゆーのばかりだ。たまには違うフミも読みたい。納品書とか。あふるる愛、一式とか書いてあるヤツが欲しい。

 雪といえば、アイスワインだ。1794年の冬、ドイツのフランコニアの農場で世界初のソレは生まれた。その年フランコニアは猛烈な寒波に襲われ、熟した葡萄が収穫できず、そのまま放置されていたという。大打撃とともに廃棄されるハズだったそれを、一部の農家が「腹の虫が収まらねえ、一丁コレでワインつくっちまえ、バカ野郎もったいねーだろ、なーにだまってりゃわかんねえかもしらんし」というカンジの逆ギレを起こしたのか、その凍った慣熟葡萄からワインを作ったところ、いつものソレより甘みは強いわ香りは芳醇だわ何だこりゃ、イケるじゃねえか、という代物が出来上がったらしい。いや詳しくは知らんが。とにかくびっくりである。
 が、しかし問題はあった。
 あまりの美味さにバカ売れして、アンコールの声も高いそれはあくまで偶然の産物である。もっかいやってくれとか言われても、大寒波はこりごりだ。でもうまかったし何とかしたい。で、無理やり製法を考えて作ってみたという。問題は山積だ。凍った葡萄は通常の8分の1しか果汁は採れない。つまり葡萄が通常の8倍いる。木に葡萄がなってるまま完熟させなきゃならないので虫や鳥に食いまくられる。凍ってる間に搾らなきゃならないので、作業はクソ寒い早朝から一粒一粒手作業だ。やってらんねえ。商売あがったりだ。
 そして、廃棄物は一気に貴族がたしなむ高級品となった。

 で、そーゆーワインを昔、一本もらってきたのだが、不詳とがみ源太郎、それが高級品であることをよく知らずガブガブとゴブゴブとほんの10分くらいでハーフボトル一本開けてしまった。ワイングラスをタンッ!と置いて「っかー、五臓六腑に染み渡らぁ!つかワリと甘いな。ガムシロでも入ってんのか?」などゆっていた。まごうことなき馬鹿である。もっと味わっときゃよかった。あの時、大体一杯2500円とかいわれたらもーちょっと味わって飲んだだろうに。

 マッチ売りの少女は雪の降る中で、マッチの灯りに夢を見た。どーしょーもなく薄幸で不幸で取り返しのつかない人生でも、最後に大好きなおばあさんの腕に抱かれて微笑んで逝った。あの少女のことが、僕は嫌いではない。
 もしキミが目を閉じる時、僕の腕に抱かれて微笑んでもらえるのなら、それはとても幸せなことなんだろう。雪が降る夜、凍えそうな二人、寄り添って歩く。幸せもきっと空から降ってくるだろう。そーいや雪で作ったカマクラは結構あったかいらしい。雪のように暖かく白いものが降り積もればいい。僕らはその上に足跡をつけて歩いていこう。


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