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出会いは突然だ [コラム]

 出会いは突然だ。望むと望まざると、まるで運命のように二人は出会う。たとえば、たまたま乗った列車の向かいの席。誰かが座る満員電車。大垣発東京行きの夜行列車の長旅の中、数時間の差し向かい。ちょっぴり汗ばんでふくよかで面白くなさそうな顔をしたオッサンは、たいそう足の匂いが強烈だった。そんな出会いもある。

 出会いは突然だ。だから一人でツーリングに行くときには、メットを二つ持っていく。今まで何度かそんな風に出かけたが、一度も使ったことがない。ヒトには「いや、ツーリングだしほら、万が一メット盗まれたら大変だろ?運命の出会い?はっはーまさかね」なんて言ってみる。ぶっちゃけ邪魔なのだが、パンドラの箱の最後に出てきた最強の悪魔が僕の決断を鈍らせたものだ。

 出会いは突然だ。ふらりと入ったバーのカウンターでキミは憂鬱な顔をしている。「ここ、いいですかね」「あ、どうぞ」「すみません」「・・・」「浮かない顔ですね」「ええちょっと」「僕でよければ話聞きましょか?」そんな風にして、会話は始まる。「結構です」とか言われると切ないのだが、ワリと話せたりはする。アバンチュールなことにはあんまりならなかったが、「サチコさんがワシに煮えたぎった味噌汁を飲ませようとするんじゃぁー」とか「サチコさんがワシをぐらぐら煮立った風呂に入れて煮殺そうとするんじゃあー」とか、お姑さんに言われてストレス全開だったらしい。きっと猫舌のお姑さんなんだろう。いや、大変なんだなーサチコさん。

 出会いは突然だ。一目会った瞬間に身体に電気が走って、ビッとくる時というのがあるらしい。だがしかし僕はチキンでヘタレなので、そーゆーことがあってもワリとモジモジしている。気がつくと幸運の女神は、ものすごいショートカットで後ろ髪がつるっぱげなのかっつーくらい、いかんともしがたい。彼女はもーちょっと髪型に気を使うべきだと思う。

 出会いは突然だ。そして僕らはここにいる。僕がどんなヤツで、キミがどんなヤツなのかってよく知らないけれど、お互いノリが合ったら友達になれればいいなって思ってる。いいこともあるし、悪いこともあるだろう。おもしろおかしくお祭りみたいに毎日こうして出会いと別れを繰り返しながら、いつか一緒に酒がのめたらいいなと思う。僕の書いてるこれは詩だ。もちろんステキなオリジナル曲だ。キーもメロディもないけれど、これが僕なりのラブソング。そして僕は、通り過ぎてゆくキミに向けて今日もこんな、わけのわからない詩を歌っている。ここがどんな駅の道端なのかよく知らないけれど、ストリートミュージシャンなんて何処にいてもやることは同じ。ただ、好きなことを歌うだけさ。

 そう。ラブソングを、キミに。


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